山の仲間(登友会)の幹事さんから、今月の定例山行について希望調査がありましたから、『八ヶ岳のウルップソウが見たい。』 という希望を出していたところ、7月6日(土)~7日(日)は八ヶ岳の赤岳天望荘に一泊して縦走することになりました。コースは美濃戸から行者小屋→阿弥陀岳→赤岳→横岳→硫黄岳→赤岳鉱泉へ下るコースです。
この写真は、赤岳山頂の標識を撮影したものですが、事前の天気予報は良かったのに、山頂は強風と横殴りの雨で視界は全く利かず、周囲はガスで真白でした。防塵防滴のオリンパスE-M5で撮影しましたから、かろうじてこの標識の写真が撮影できたような状況です。
今回のメンバーは10名(男7名、女3名)ですが、18歳から74歳まで年齢幅があります。美濃戸口から愛車のエクストレイルで未舗装の悪路を駆け上がり、着いたところは林道終点にあるこの赤岳山荘でした。3台の車をここに停めて、赤岳天望荘に向けて出発しました。
赤岳山荘は、標高1,700mほどもありますから、この周辺では山野草がたくさん観察できます。これは、林道脇にピンクのカーペットを敷き詰めたように咲いていたイブキジャコウソウです。
登山道脇の草むらには、キバナノヤマオダマキが頭をもたげて、撮ってくれとばかりに自己主張していました。早速カメラを取り出して撮影です。ヤマオダマキは萼片が紫褐色ですが、キバナノヤマオダマキは萼片まで黄色いですから一目で分かります。
林道終点から橋を渡ると、登山道が始まります。その橋の下を流れていた渓流は水量が豊富で流れは速かったのですが、水はとても澄んでいて綺麗です。
八ヶ岳の山麓は、たくさんのコケで覆われているのが特徴です。独特の雰囲気ですが、歩いていると爽やかで気持ちがよくなります。そんな登山道脇の草むらに、白くて小さい花をたくさんつけたズダヤクシュが並んで咲いていました。
間もなく赤い三角屋根の美濃戸山荘に到着しました。登山道はここから北沢と南沢の二手に分かれます。北沢を行けば赤岳鉱泉へ、南沢を行けば行者小屋へと続きます。阿弥陀岳を最初の目的地とする我々は、南沢へ足を進めました。
南沢の登山道は、行者小屋までは標準歩行タイム2時間の道のりですが、だらだらの登りでなかなか高度が稼げません。山野草の写真を撮りながら歩く私は、どうしても一番最後になってしまいます。薄暗い林道を歩いていると、マイヅルソウが目につきました。慌てて撮影して皆を追いかけると、だらだら道でも余計に汗をかきます。
登山道の取り付きまで天気は良かったのですが、途中の土石の沢ごしに山の方を見ると、雲が低く垂れこめて悪天候が予想されました。
南沢のだらだらした長い道を登り詰めて次第に高度を上げると、黄色い花の群落が目につくようになりました。これは、スミレ科のキバナノコマノツメです。黄色い花のタカネスミレによく似ていますが、唇弁が細いところが識別のポイントになるようです。
この辺りでは、白い花もよく目立ちます。シロバナノヘビイチゴもたくさんありましたが、このゴゼンタチバナも林床に増えてきました。4枚の白い花弁をつけているように見えますが、白い部分は萼片になるようです。
薄暗い林床にオサバグサを見つけました。とても暗い環境でしたから、手振れした写真になってしまいました。実は、6月にあしだちの仲間と入笠山へ行った時に探しましたが見つからず、尾瀬に近い帝釈山へ行って観察しようかと思っていましたから、大感激です。コマクサと同じケマンソウ科に属する花ですが、葉の形を見ると、シダの仲間のような独特の形状をしています。
標準歩行時間を1時間ほどオーバーして、行者小屋へ到着しました。大変ゆっくりしたペースですが、会長が常々言っている「山は逃げませんから。」という言葉が象徴するような、我々パーティーの登山スタイルです。
行者小屋で休憩していると、雲がいよいよ低く垂れこめて、天候の悪化が予想されました。そこへたまたま、ヘリコプターが何度も飛来してきて、荷物を降ろしていました。帽子やタオルが吹き飛ばされるような、回転翼からの強風を避けながら、小屋の軒先から撮影したものです。
登山道を下ってくる人たちとすれ違うと、みんな雨具を着てザックカバーを装着しています。山の上の方はかなり天候が悪いようです。うっすらと濡れた登山道には、白くて可愛いミツバオウレンの花がたくさん観察できました。
この標識はだいぶ傾いていますが、文三郎尾根から赤岳を目指す分岐の標識です。ここまで、最高齢の一人の足取りがだいぶ重くなってきたことと、天候の悪化が予想されたことから、阿弥陀岳をエスケープして、ここから赤岳へ直接登頂する予定に変更しました。
文三郎尾根へ向かう登山道へ踏み込んだところで、ミツバオウレンとイワカガミの可愛いコラボレーションを観察することができました。
天候の悪化は避けられないようですが、標高が上がるにつれて見られる花が増えますから、私の期待はますます膨らみます。
尾根道に取り付くと間もなく、雨に濡れたコケモモの花が目につきました。うっすらとピンク色がかった白色ですが、花の色は濃淡の変化が大きいようです。秋には赤い実をたくさんつけてくれますが、これで作ったジャムをヨーグルトに混ぜて食べるのがとても美味しいですね。
次第にガスが掛ってきて、周囲の視界が悪くなってきました。反対側の山並みも見えなくなってきた頃、ナナカマドの白い花が咲いていました。葉は互生しますが、奇数羽状複葉になると解説されていました。
文三郎尾根は、階段が続く急登ですが、汗を拭き拭き登っていると、白くて釣鐘型の可愛い花をたくさんつけた、ツガザクラの群落が目につきました。ツツジ科に属しますが、葉の形がツガ(栂)の葉の形に似ているところからこの名前が付けられたのでしょう。
急な階段を登っていると、すぐ脇にこのイワカガミの見事な群生がありました。イワカガミは登山道のいたるところで観察できましたが、この群落はちょうど良いところにありますから、一息つけて小休止がてらカメラを取り出し、撮影させてもらいました。
岩肌を小さい葉でびっしり埋め尽くしていたのはイワウメでした。5枚の白い花びらが緑の中に目立ちます。イワカガミと同じイワウメ科に分類される高山植物です。
岩陰に固まって咲いていたのは、白い釣鐘型の花をたくさんつけたイワヒゲです。葉の形を見ると、ヒノキやサワラの葉先のような面白い形状をしています。ひげを伸ばしたように見えるところからこんな名前が付けられたのでしょうか。
円形で縁にギザギザがある形状をした葉と、黄色い花を長くのばして咲いていたのはミヤマダイコンソウです。図鑑には、稜線の風が強い岩場に生えると解説されていました。
階段の連続で厳しかった文三郎尾根も、間もなく登り詰めようかというところで、ほんの束の間ガスが切れてくれました。これが赤岳方向と思いますが、険しい岩山が望まれました。
阿弥陀岳と赤岳を結ぶ稜線の上まで登り詰めたところで、稜線上に立っていた標識です。ポイント名称としては、文三郎尾根分岐となるのでしょうが、辺りはガスって視界は全く利きません。白一色の世界でした。
岩がゴロゴロした山肌に、黄色い花を見つけました。葉の形は深く3分裂していますから、ミヤマキンバイになると思います。同じく黄色い花で、葉が丸い形をしたミヤマダイコンソウとは、明らかに違うことが分かります。
こんなピンクの美しい色合いの花も所々で観察できるようになりました。でも、この群落はちょっと見事です。花の形を見るとシオガマの仲間であることは頷けましたが、図鑑で調べて初めてミヤマシオガマであることが分かりました。
少し太めの花穂を垂れていましたが、名前が分かりません。写真をもとに調べてみたら、亜高山帯から高山帯に生えるミヤマハンノキになるようです。雄花序は下向きに垂れ下がり、上向きにつくのが雌花序になるようです。
強風の吹き荒れる稜線上の岩陰に、白い花が咲いていました。キンポウゲ科のハクサンイチゲです。白い花びらのように見えるのは萼片になるようで、5~7枚ありました。葉には深い切れ込みがあります。
いよいよ、赤岳頂上直下のキレット分岐まで辿り着きました。右へ行けばキレット小屋から権現岳に至ります。我々はここから左側にルートを取り、左側にロープが見える険しい岩肌に取り付きます。辺りはガスって全く視界が利きません。
岩山の僅かな隙間に白い花を咲かせていたのは、アブラナ科のミヤマタネツケバナです。高さは4~5cmくらいしかありません。強風の高山ではあまり大きくなれないのでしょう。花の一部が強風に揺れてブレてしまっています。
ロッククライミングよろしく、3点支持で岩山を登っていくと、岩の隙間に密生しているイワベンケイがありました。黄色い花を咲かせますが、肉厚の葉が特徴です。
赤岳山頂直下の岩陰に咲いていたチョウノスケソウです。もう、この辺りでは吹き付ける強風と雨のため写真撮影どころではないのですが、防塵防滴をうたい文句にするオリンパスE-M5でなければ写せなかったと思います。レンズを拭き拭き撮影していましたが、表面の曇りを完全に拭き取ることができなかったので、ソフトフォーカスな写真になってしまいました。
我々10人パーティが全員無事に赤岳山頂(標高2,899m)に到達できました。周囲はガスで真白ですから、眺望は全く利きません。登頂記念に写真を撮りましたが、ここには9名しか写っていません。もちろん1名はカメラを構えているのです。
赤岳山頂には、この祠が祀られていました。横殴りの雨の中で撮影していますから、レンズについた水滴で画面の右隅が白くなっています。
カメラは殆どびしょ濡れの状態でしたが、最後まで問題なく働いてくれました。これは山頂付近で撮影した案内板ですが、ここから大天狗方面へ歩くと10数分で、宿泊先である赤岳天望荘に辿り着くことができました。山荘は、暖房を効かせて、我々を暖かく迎え入れてくれました。
これは、赤岳山頂から天望荘に至る稜線上で撮影したシャクナゲです。八ヶ岳はキバナシャクナゲの群生地があることで有名ですが、これは白い花びらに淡いピンク色が認められますから、ハクサンシャクナゲかなと思います。