絶滅危惧種であるコウシンソウを見たいと思い、6月22日から23日にかけて栃木県日光市にある、庚申山(標高1,892m)に登ってきました。
これは、庚申山の山頂で撮影したものですが、ここでは樹木に囲まれて周囲の眺望を楽しむことはできませんでした。でも、登山途中にお目当てのコウシンソウを見ることができて、満足のいく登頂となりました。
第1日目に登山口の銀山平から庚申山荘に至るまでの道のりについては、前回紹介したとおりですが、これはその途中、猿田彦神社跡地にあった「お山巡りのみち」の看板を撮影したものです。
事前に調べたところ、コウシンソウ自生地はこのお山巡りの経路途中と表示されていましたから、どうしても歩いてみたい経路でした。かなり厳しい道であるとのことでしたが、実際に歩いてみると鎖場や階段の連続で、なかなかタフな山道でした。
これが「お山巡り」の絵看板です。これを見ただけでも、奇岩のオンパレードで、なかなか厳しい道であることが見て取れます。
私の予定では、1日目は自然観察を楽しみながらゆっくり庚申山荘まで至り、2日目はまず庚申山に登って、その後「お山巡り」を楽しみながら下山するというコースを設定しました。
さて、2日目の朝、皇海山まで登る人たちは、午前4時ころには出発して行きましたが、コウシンソウを撮影するのが目的の私は、ここで朝食をとってゆっくり出発です。前日は天候の急変があって、雨にも降り込められましたが、2日目は朝から良いお天気になりました。
朝日の当たる庚申山荘にお別れを告げて、コウシンソウを探す山歩きはここからスタートです。
山荘を出発して、足取りも軽く庚申山頂を目指します。すると、すぐにこのクリンソウの群生地がありました。昨日も撮影したのですが、たくさんのピンク色の花に誘われて、思わずカメラを向けてしまいます。
朝のうちは、割合涼しくて快適でしたが、お天気が良いので次第に気温が上がってきました。急な登山道に取り付くとすぐに汗が出てきました。
一息ついて足下に眼をやると、湿った山肌にウワバミソウの小さくて白い花が目につきました。
これは、大胎内の案内標識です。庚申山荘からここまで0.9kmということですが、途中で花の写真などを撮りながら登ってきましたから、標準の所要時間より余計に時間がかかっています。
ここから左に道をとって庚申山に登り、帰りに「お山巡り」をして猿田彦神社跡地へ下る予定です。
素晴らしいお天気に恵まれて、登山道の途中から上州の山並みが望めました。気持ちの良い眺めでしたから、ここで小休止を取り、冷たい水で喉を潤しました。
登山中に知り合った人から、庚申山へ至る尾根道から少し分け入ったところに、コウシンソウの群生地があることを教えていただきました。登山道から少し道を外れて入り込んだ場所ですから、教えてもらわなければ分からなかったと思います。岩肌に、たくさんのイワザクラとともに、探し求めたコウシンソウの群落を見ることができました。
これが絶滅危惧種のコウシンソウです。ここ庚申山で発見されたことからその名前が付けられているとのことですが、男体山や女峰山にも生育していると教えていただきました。
コウシンソウはタヌキモ科の食虫植物です。茎や葉の部分に粘り気のある繊毛があり、これで虫を捉えてその養分を吸収するようです。
横から撮影したものですが、花の後部には、スミレの花にある距のような突起があることが分かります。食虫植物ということですが、可憐な花姿をしています。険しい山道を登ってきた苦労も、この花を見たら一遍で吹き飛んでしまいました。
湿り気のある岩肌にへばりつくように生育しているコウシンソウの花は、長さ1cmくらいです。アップで撮影していますから大きく写っていますが、思っていたより小さい姿です。この厳しい自然環境の中では、このくらいの大きさでないと生き抜くことはできないのでしょう。
コウシンソウの自生地から庚申山頂まではほんの2~300mほどでしょうか、訳もなく登り詰めたところが樹木に囲まれて眺望が全く利きませんでした。そのまま通過して少し先へ足を運ぶと、そこには皇海山と鋸山の勇姿が綺麗に見える場所がありました。
中央やや右の山が皇海山で、日本百名山の一つです。左の小さいピークが鋸山で、今回その尾根伝いに登頂することも考えていましたが、コウシンソウなどの撮影に時間がかかりましたから、姿だけ見て登頂は諦めることにしました。
皇海山から右側に視点を移すと、そこにはやはり日本百名山の一つである、日光白根山の姿が望めます。左側の小高い山が錫ヶ岳で、いずれもここから尾根伝いにつながっているようです。
庚申山を後にして、お山巡りのコースを目指して下っていくと、途中の岩肌で花が終わった後の、そう果をつけたヒメイチゲを見つけました。この写真は縦横を間違えたのではなく、このように岩肌から横に生えていました。
いよいよ「お山巡り」の難路に入ってきました。ここは崖面の鎖場です。ほとんど足場のない崖面を、この鎖だけを頼りに通り抜けなければなりません。ちょっと怖かったです。
途中のササ原には、ヤマオダマキが咲いていました。暗赤紫色の部分は萼片で、上に立てている部分は距になります。黄色い部分が花弁で、その中心部に薄緑色の雌しべが見えます。
これは、手すりの付いた吊り橋ですが、その向こう側の岩肌も、僅かな足場が刻まれているだけです。ここも、渡された一本の鎖を頼りに、恐る恐る通過しなければなりません。
白い花の形がカラマツの葉に似ているところから、カラマツソウという名前が付けられています。キンポウゲ科の花で、山道のあちらこちらで観察することができました。
これは、白くて小さい花をつけていたズダヤクシュです。ここでは、割合標高の高い場所に生育していたように思います。ユキノシタ科に属します。
ここには、庚申の岩戸という看板が付けられていました。背丈の低い岩が覆いかぶさってきています。私には抜けられそうもないので、巻き道を行くことにしました。
巻き道を抜けて、下から振り仰いだ庚申の岩戸です。小さな石の祠が祀られているようですが、よくあんな所まで登ったものです。
これは、ササ原の中に小群落を作っていたミヤマウスユキソウの花です。白い部分は萼片でしょうか?葉でしょうか?ミネウスユキソウというのもあるようですが、花期は8月ということですから、時期が違うと思いました。
これはメガネ岩です。お山巡りのコースは、このメガネ岩の中を通過します。
岩肌にへばりつくようにして咲いていたイワザクラです。見た目には、もっとピンク色味が強かったと思いますが、写真に撮るとやや青味がかってしまい、残念ですが本当の色合いが出ていません。
お山巡りの途中で振り仰いだ岩壁です。全山こんな岩山ですから、お山を巡るコースも、厳しいものにならざるをえません。
山道脇の斜面に黄色い花が咲いていました。キク科のニガナの仲間になるのは分かりますが、図鑑を見てもタカネニガナ、クモマニガナ、ハナニガナのいずれであるか識別できません。
この吊り橋は、鬼の耳すりという名前が付けられていました。吊り橋の向こう側は、人がやっと通り抜けられるほどの狭い隙間になっているところから、そんな名前が付けられたのでしょう。吊り橋から下を見ると足がすくみますから、上の方だけを見ながら渡りました。
こんな黄色い花も咲いていました。バラ科のツルキンバイでいいと思います。
ミツバツチグリやキジムシロとよく似ています。でも、こんな標高の高い場所に咲いていることから、ツルキンバイであろうと思います。もし、間違っていたら教えてください。
想像以上の難所であった「お山巡り」の終点である、猿田彦神社跡地に辿り着きました。ここで、ちょっと遅めのお昼にしようと座ったところ、古いベンチにはセミの仲間が先客として休んでいました。体長2~3cmの小さなセミでしたから、ヒグラシであると思います。