足尾銅山で有名な日光市の銀山平は、庚申(こうしん)山(標高1,892m)の登山口となっています。この山は、絶滅危惧種である食虫植物のコウシンソウが生育していますが、その自生地が国の特別天然記念物に指定されています。コウシンソウは、ここ庚申山で発見されたことから、その名前が付けられたわけですが、絶滅する前に是非見たいと思って、この庚申山荘に宿泊して庚申山へ登頂しながら観察して来ました。第1日目にコウシンソウを観察することはできませんでしたが、山荘に至るまでに観察した様子を紹介します。
この写真は、銀山平の国民宿舎かじか荘です。ここで登山届を提出して、庚申山荘への宿泊手続きを済ませてから出発しました。
かじか荘の前には、ここから庚申山まで4.6kmという標識が立っていました。
庚申山登山口にあった看板です。山の謂れなどについて解説されていました。
銀山平のかじか荘から、林道を辿り、一の鳥居に至るまでの間にこのコアジサイの花がたくさん咲いていました。
林道の上には、白い花房が垂れ下がっていました。名前も分かりませんでしたが、この写真を手がかりに図鑑を調べてみると、エゴノキ科のオオバアサガラであることが分かりました。花序は枝分かれし、花は下向きにつきます。
林道に面する岩壁に、このチョウが留まりました。タテハチョウ科のミスジチョウです。このチョウは、年1回だけ6~7月にかけて羽化します。
林道脇からガサガサッと音がしましたから、覗き込んでみたら、このシマヘビがカナヘビの仲間を捕まえて、今まさに飲み込もうとしているところでした。
林道を歩いて行くと、間もなくこの「天狗の投石」という看板が眼につきました。山の斜面には50~60cmくらいの大きな石がたくさん積み重なっています。まさに天狗が積み重ねたような奇妙な風景でした。
林道を歩いていると、前方にシカが佇んでいました。背中に黄白色の斑がたくさんあるところから、子ジカであることが分かります。そのせいか、あまり恐れずに私の方へ近づいてきました。
暫くの間、私と子ジカのお見合いが続きましたが、やがて林の向こうへと去っていきました。お尻に白い毛があるところが可愛いです。
カメムシの仲間が地面にいるところを見つけました。識別に自信はありませんが、これはクチブトカメムシになると思います。
フタリシズカと思いますが、白い蕾をつけた花穂を立てていました。
林道脇の山の斜面に、何やらピンク色の花を見つけました。確認のために斜面を登ってみると、ショウキランのようです。花の形を鐘馗様になぞらえてこの名前が付けられたとのことです。
銀山平から3.9km歩いたところに、この一の鳥居があります。林道はここまでで、ここから先は登山道を歩くことになります。
一の鳥居のすぐそばに、庚申七滝がありました。これはその中のひとつの滝です。
登山道の途中に、ピンク色の小さい花が咲いていました。ゴマノハグサ科のクワガタソウです。
岩陰に咲くこれは、高さが10cmほどですから、ヤマクワガタでしょうか。クワガタソウよりも深山に生えるとのことです。
岩の上に落ちていた獣糞から吸汁しようと、ヤマキマダラヒカゲが飛来しました。標準ズームで撮影したものですが、割合近づいて撮影させてくれました。
登山道の途中には、ところどころで丁目石が目につきましたが、これはちょうど百丁目の看板とともに立っていた丁目石です。
これは、夫婦蛙岩です。登って来るときにはその名前の由来がよく分かりませんでしたが、通り過ぎて振り返って見た時に初めて2匹の蛙が重なっている姿が見えてきました。
これは、仁王門の看板があった岩と岩に挟まれた登山道になります。
一の鳥居から庚申山荘に至る途中で、クリンソウの群落を見つけました。
山道の途中で、急に天候が急変して雨が降ってきましたから、クリンソウをアップで撮影したら、水滴に濡れた花弁になりました。
白くてとても小さい花が咲いていました。アップで撮影したものですが、4枚の花弁の数mmほどの小さい花です。図鑑で確認したところ、キクムグラになるようです。
キクムグラは、5~6枚の葉が輪生しているところが特徴です。
白い花の形が、カラマツの葉を連想させるところから、カラマツソウという名前が付けられています。山地から亜高山帯の草原に生える多年草です。
白い花に黄色い雄しべがよく目立つこの花はウツギです。
ウツギの花は、枝にたわわに群がって咲いていました。
ピンク色の可愛い花をつけたこれは、イワザクラであると思います。山地に生える多年草で、ここではたくさん生育していました。
この写真を見ると、花弁の色は青紫色をしていますが、実物はかなりピンク色に近い色であったと思います。イワザクラかコイワザクラか私には識別できませんが、この岩壁にはたくさん群生していました。
湿り気のある岩壁には、このウワバミソウもたくさん観察できました。葉の縁には、粗い鋸歯があります。緑白色の花をかたまって付けるところが特徴です。
これは、ガレ場の山肌にあったスゲの仲間ですが、調べてみるとテキリスゲであるようです。葉が硬くてざらついて手が切れるためこの名前が付いたとのことです。淡黄色の果胞が長く垂れさがるところが特徴です。
登山道の途中で見えた上州の山並みです。
キジムシロであるかミツバツチグリであるか識別できませんが、取り敢えず写真だけは撮ってみました。
....後から分かったのですが、どうやらバラ科のツルキンバイであるようです。
日が陰ってきた登山道の途中で観察したズダヤクシュです。この草が喘息の薬用になるということですが、長野県の方言で喘息のことをズダということからこの名前が付けられたようです。
日暮れ間近の庚申山荘です。この日は、コウシンソウを観察するためには、今年最後のチャンスとなる週末でしたから、20名以上の宿泊客がいました。
夕食を済ませて、寝る前に山荘の周囲を見ると、すぐ近くにシカがいました。背中に斑点があることと、近づいても逃げませんから、登山途中で観察したあの子ジカが、わざわざ登って来てくれたのかもしれません。