あしだちの有志と誘い合わせて、ハイキングを兼ねて1泊2日の予定で、長野県の入笠山へ自然観察に出掛けてきました。
この時期、入笠山はマイカー規制されていますから、麓からゴンドラで登るか、林道途中の駐車場に車を置いて、ひたすら歩いて登るしかないのですが、宿泊予約を入れたマナスル山荘新館から、車で山荘前まで行く事が出来ると教えていただきました。これは願っても無い事です。お陰で、初日は午前中に大阿原湿原を散策して、午後は入笠湿原と花畑をゆっくり散策するというコース設定ができました。
この写真は、翌日の早朝に入笠湿原の風景を撮影したものです。
大阿原湿原から入笠湿原へ向けて林道を走ると、途中に八ヶ岳の全景が見渡せるビューポイントがあります。我々は、2日目に入笠山へ登って素晴らしい山並みの展望を楽しんでくる予定にしていましたが、翌日天気が晴れてくれる保証はありません。そこで一旦車を止めて、写真撮影することにしました。この写真では、八ヶ岳の山並みがクッキリ写っていませんが、南端の権現岳から北端の蓼科山まで全ての山並みが見渡せました。
実は、2日目にこの場所から八ヶ岳に昇るご来光を拝むことができました。その時は、朝焼けに映える八ヶ岳の山稜の向こうから太陽が昇り、感激の瞬間を迎えたのですが、その写真は、登山風景とともに、次回以降に紹介したいと思います。
今回の入笠山における自然観察では、当初想定していた以上の収穫があって大変満足できたのですが、逆にそれらを紹介するのに苦労してしまう状況です。そこで、撮影した山野草などを取り敢えず一通り紹介して、個々の詳しい写真は、後日改めて紹介することにします。
という訳で、まず初めは湿原の草むらの中に咲いていた、この白くて小さい花です。現場では一つ一つの種別を特定しながら撮影できるような状況ではありませんでしたから、後日調べることにして、写真だけを撮影してきました。だから、写真を見ながら種別を特定していますから、間違いがあるかもしれませんが、これはナデシコ科のオオヤマフスマであろうと思います。
湿原では山野草だけではなく、蛾の仲間も観察できました。でも、花の撮影に夢中で、蝶や蛾はあまり撮影してはいません。
これも、ネットを利用して種別を確認したところ、シャクガ科のフタホシシロエダシャクであることが分かりました。
初めて見るこの花は、ランの仲間のキバナアツモリソウです。唇弁が壷のような形状をしていて、上弁がその蓋のように見えます。唇弁は黄色ですが、表面に茶褐色の斑紋があります。側弁は白色ですが黒褐色の斑があり、チョット見には、ピエロが手を広げているようにも見えます。
これはサクラソウかなと思います。荒川流域の秋が瀬公園にある田島が原が、サクラソウの群生地として良く知られていますが、高原で見るとまたちょっと雰囲気が違うなと思います。
湿原から続く山の斜面は、スキーのゲレンデかと思うほどの広さがありますが、一面にこのスズランが咲いていました。まだ咲き始めたばかりでしたが、山の斜面全部にスズランが群生しているのですから、その株数の多さには驚かされます。
図鑑によれば、別名キミカゲソウというのだそうですが、その名前の由来は書いてありませんでした。
草原は一面にスズランで埋め尽くされていましたが、所々にこのアマドコロも花を咲かせていました。ユリ科の山野草ですが、茎に稜があるところが特徴で、同じ仲間のナルコユリには稜がありません。でも、今回図鑑を見ていたら、ミヤマナルコユリの茎には稜があると記載されていましたから、私には区別がつかなくなってしまいます。
スズランで埋め尽くされた草原ですが、よく見るとこのマイヅルソウも可憐な姿を見せてくれました。この草原からそんなに離れていない場所では、草原が全てマイヅルソウで埋め尽くされている場所があり、写真にも撮ってきましたから、次回以降に機会があったら、そんな様子も紹介できると思います。
さて、この白い花には悩んでしまいました。写真を見るとサクラソウのような葉であることが分かりますが、白い花が咲くサクラソウってあるのでしょうか?もしかしたらユキワリソウ?などと、いまだに種類が分からず頭を悩ませています。
湿原の木道脇で白い花をたわわに咲かせていたズミです。別名コナシとも言いますが、図鑑によればコリンゴとかミツバカイドウという別名もありました。蕾のうちはピンク色ですが、開花すると真っ白い花になるのは、リンゴの花と同じです。
山彦荘という山荘のすぐ前にある入口から入って直ぐの所にある入笠湿原の標識です。案内板によれば、湿原の標高は1,734mであることが分かります
カッコウやホトトギス、ツツドリなどいわゆる杜鵑(トケン)類の声が響く湿原の風景です。時折この上空を長い尾を引いて、タカの仲間かと思わせるような姿で飛翔する姿を見せてくれました。でも、残念なことに、写真に撮影することはできませんでした。
湿原の所どころにクリンソウがピンク色の花を咲かせていました。地面付近に割合大きな葉を広げ、その中心から長い花茎が伸びています。先端付近に輪状に数段の花を咲かせるのがクリンソウの特徴です。谷川沿いに白い花のクリンソウも見つけることができました。
金属的な光沢のある黄色い花弁をつけていたこの花は、キンポウゲ科のウマノアシガタになると思います。もしかしたら、ミヤマキンポウゲであるかもしれませんが、私にはそれを識別するだけの知識がありません。
スズランの大群落があった山の斜面で、このベニバナイチヤクソウが1輪だけ目に付きました。まだ蕾の状態で開いていませんが、花のつき方と色合いからベニバナイチヤクソウであることは直ぐに分かりました。亜高山帯に生育する山野草で、ギンリョウソウなどと同じ仲間(イチヤクソウ科)に属します。
湿原から続く山の斜面を越えてゴンドラ駅方向へ進むと、コケ類が密生して緑色の絨毯のような、フワフワな林床を作り出していました。その中にツマトリソウが一輪、目に付きました。そっとしゃがみ込んで写し取ってみたところ、ソフトフォーカスががかかった様な、柔らかい雰囲気の写真になってくれました。
花茎がとても長いキクの仲間を見つけました。この時期に咲く菊の花は何だろうと、写した写真を手掛かりに調べてみると、シロバナムシヨケギクに行き当たりました。
蚊取り線香の原料として、明治時代にアメリカから入って来た外来種である様です。在来種か否かは別として、名前が分かってホッとしました。
さて、問題はこの花です。名前がさっぱり分かりません。全く不明です。
葉の形をみると、サクラソウの仲間のような感じですが、花の形は唇弁状ですからシソ科に属するようにも思えます。図鑑を見ても、ネットで調べても種類が分かりません。
ゴンドラ山頂駅の直下はスキー・ゲレンデになっていましたが、この時期は花畑に変身していました。ここで植栽されていたのは、このドイツスズランでした。湿原周辺に大群落を作っていたスズランより背が高く、花もたくさん付いていました。
ゴンドラ山頂駅の脇から山を回り込むように続く斜面の散策路を進むと、山の斜面を広い範囲で金網で囲って保護している場所があり、その中にアツモリソウが自生していました。昔は、たくさん自生していたものが、1株5万円くらいで取引されるとのことで、ずいぶん盗掘されてしまい、今ではこの保護地に残っているだけですから寂しいものです。
この花を見るために、今回の観察ツアーを企画した訳ですから、ここでたくさんの写真を撮らせてもらいました。しかし、今年は花期が少し早かったということで、この株は既に盛りを過ぎて、少し褐色に変色している部分もありますが、見事に花開いた状態を撮影できました。また、同行した皆さんにも面目が立って、本当にホッとしました。
保護地として金網で囲まれた山の斜面には、クマガイソウも小群落を作っていました。アツモリソウとはまたちょっと変わった趣があります。
以前、東京近郊の農家の庭先で、自生しているクマガイソウを見に行ったことがありますが、ここのは自然のままに残っています。昔はアツモリソウやクマガイソウが山のいたるところに咲いていたことでしょう。そんな風景を見たかったものです。
こちらはゴマノハグサ科のクガイソウです。山の斜面にまだ咲き始めたばかりですが、いくつかの花穂を見ることができました。あと数日で、太くて立派な花穂が見れるものと思います。
草むらの中にはアヤメの花も咲いていました。アヤメの仲間はカキツバタやノハナショウブなど、同じような花を見分けるのが難しいですが、花弁の付け根に網目状の斑がありますから、ここに注目するとアヤメであることがすぐに分かります。
これも草むらの中に花を咲かせていたグンナイフウロです。青紫色の花弁を広げ、花柱を長く突き出した独特の形状をしています。名前の由来になっている郡内とは、山梨県東部の古い地名だそうです。
イカリソウも咲き残っていました。東京周辺の低地では、4月頃には咲いている花ですから、6月に見られるのはさすがにちょっと遅い気がします。これも、標高が高いためだと思います。
葉の独特の形状と白っぽい斑が入っていることから、ニリンソウであることがすぐに分かりました。これも、東京周辺では4月頃に咲いていますから、里に比べるとずいぶん遅れて咲いています。
ユキザサも見事な花穂を広げていました。蕾の状態であるのはよく見ますが、これだけ立派な花穂をつけている状態のものは今まであまり見られませんでしたから、私にとって、これも一つの収穫となりました。
ヤマシャクヤクも咲いていました。咲き終わりと思われるものがたくさんありましたから、もう花期は終わりに近いのでしょう。でも、この花は、まさに今が盛りとばかりに、優美な姿で咲いていてくれました。
これは小さい花を咲かせていたトウゴクサバノオです。真上から撮影していますから、分かりづらい容姿です。ともすれば、見落としてしまうほど小さな花でしたが、散策路のすぐ脇に咲いていましたから、見つけることができました。
だいぶ日も傾いてきましたが、帰り道を急いでいると、山の斜面に2本のマムシグサが寄り添うように立っていました。
同じ仲間のウラシマソウは葉の下に花を咲かせますが、マムシグサは葉の上に花を咲かせます。ここでは、仲の良さそうな姿を撮らせていただきました。
湿原に向かって帰り道を下っている時に、散策路脇にエンレイソウの小群落がありました。さすがにもう花期も終わりに近い状況でしたが、この花は割合綺麗に残っていてくれました。エンレイソウはこんなに広い葉を付けますが、ユリ科に属します。